第1章

2002年12月10日
天井には無機質な蛍光灯が光っていた。
どうやら僕はベットに横たわっているらしい。
無機質な空間、ドアはあるが窓はない。よく見ると点滴が見える。
そのチューブに無色透明な液体が一滴ずつ落ちて行く。
一つ二つ三つ…無意識に数えてしまう。128まで数えてふと気がつく…点滴?
そういえば僕は何で点滴なんか受けてんだ?ここは病院?何で、また…こんなところに?
何がなんだかわからない。僕は一体どうしてしまったんだろう。

…?何か聞こえる…鼻歌?と思った直後ドアがいきなり開いた。
「ルフランルフラン♪あれ、起きたんだおはよ」
白の看護服にナースキャップ。ピンクのサンダル、首から下がる聴診器を身につけた女性。どうやら看護婦のようだ。でも明らかに普通の看護婦と違うのはその髪の色が水色だった。
「…おはようございます…あの…」
「っていっても深夜だけどね、まあ窓がないから一緒か、ったくモヤシ育ててんじゃねぇってんだよな、全く今日びはやんねえんだよ研究所だからって地下につくるってのは…」
僕に話をさせる暇を与えない、よく喋る人、いや看護婦だ。
「看護士よん♪」
!?読心術?
「ん?何がなんだかわからないって顔してるね?ちなみに君、男女雇用機会均等法って言葉知ってる?」
「知ってますけど、こう見えても一応大学生ですから、そんなことよりあの…」
「ならいいYO!頭痛いところない?」どうやらこの人は基本的に人の話を聞かないらしい。
「…少しだけ…あの、ここ何処なんです?なんで僕はこんなところで寝かされてるんですか?」
僕は上半身だけを起こした。ズキンとした衝撃が頭に走る。看護婦もとい看護士さんはカルテらしきものに何やら書きこんでいる。
「あの…看護婦さん」
「看護士だってば、聞こえてるよ、なんなら名前で呼んでもいいよ、って知らないか、はい、これ。脇に挟んで」
僕は手渡された体温計を脇に挟んだ。
「ここはFS2研の地下実験病棟、よかったわね被験者になるなんて一生のうちにそうそうあることじゃないわよ」
「被験者ぁ?」理解できない、僕はタダの私立文系大学生で、今年二十歳になる極々ふつうの人間だ。それがなんでこんなところで頭弄くられて、ベットで寝てるんだ?
何でなんでなんで?これは夢か?そうかこれは夢なんだ。
「夢じゃないわよ♪」
…読まれてる…確実に。
「あなたは被験者。実験体、モルッモットともいうわね、おっとそれはひどいか」
「何で僕がそんな…ばかな…誰の許可でこんな非人道的な人体実験をしてるんですかっ?」
「そんな悲観的な顔しないでよ、おっと体温はと、36.5℃…平熱ね」カルテに書きこむ。
「僕の話を聞いてください!」
「別に、ハエ男にになったわけじゃないから普通に生活できるわよ。確かに海と毒薬も真っ青な手術シーンっだったけど、
ちょっと脳にデバイス埋め込んだだけよ」
「埋めこんだって…そんな…勝手に」
「大丈夫、他の人より記憶力が良くなっただけだから」
「はあ?記憶力って…」
「きみの脳の一部に生体HDDを埋めこんだだけよ、JMって映画知ってる?キアヌ・リーブスいいわよねぇ、でもあの映画たけしが日本のやくざででてたのよねぇ、って知らないか、あの武がねぇ…」

看護士さんの映画評を聞き終えぬまま、僕は気を失ってしまった。


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